あいにくの曇り空で、立山連峰に上る日の出は見ることが出来ませんでした。
今日の朝ご飯はホテルのバイキングではなく、外食。
大浴場で朝風呂に入ってから、ホテルで貰える路面電車無料券で富山駅へ向かいます。
新型車両は広々していて、乗り心地も良好。
まだ6時40分。
すっかり立派になった朝の富山駅はアイドルタイム。
狙いはここ。
立山そば JR富山駅構内店。
富山では知られた人気の駅そば屋。
郊外にはます寿司の源との共同店舗も展開しています。
食券を購入します。
やはり駅そばはかき揚と玉子の組み合わせが王道。
かき揚そば生卵トッピングです。
立山の文字が入ったかまぼこが名物。
なんとも可愛い。
駅そばらしいシンプルな麺。
中盤で卵の黄身に箸を入れ、そばに絡めます。
これが、また旨い。
あっさり完食完飲です。
7時を回って駅前も通勤通学の人たちが増えて来ました。
富山市内から約1時間。
南砺市井波の真宗大谷派井波別院瑞泉寺を訪れました。表から石段を上がると、巨大な山門に出迎えられます。
左右に山廊を持つ禅宗様式をとりいれた三間三戸、二層二階の入母屋造本瓦葺き。
総欅造りで高さは17.4m。
富山県指定文化財です。
木彫の町でもある南砺市井波を象徴する建物です。
波に龍。
京都彫刻師の前川三四郎に依頼作成、瀬戸内海・日本海と船(北前船)で三國まで送られてきて、さらにそこから陸送されてきたと言われています。
広々とした境内に歴史を感じさせるたたずまいの瑞泉寺は、一歩足を踏み入れるとその格調高い風格に包まれます。
本堂。
1762(宝暦12)年の大火後、1886(明治18)年に再建されたものです。
間口46m、奥行43mの単層入母屋造、畳の数450畳、大きさは全国で4番目ともいわれます。
太子堂は、本堂に北面して建てられ桁行24.7m梁間27mで、一見二層の建物に見えますが、一重裳階付入母屋造りで、向拝は唐破風が付けられ三間あり、本瓦葺きの建物です。
鐘楼堂。
鐘楼は桁行5.1m梁間4.6m一重入母屋造りで、昭和7年(1932)に落慶。
大梵鐘は口径4.1尺(120㎝)、目方900貫(3,372㎏)で、北陸寺院の中でも随一の大きさを誇ります。
本堂から振り返れば、今くぐってきた山門が遠くに感じます。
見事な大伽藍です。
見事な彫刻が随所にみられる瑞泉寺の中でも、ひときわ目を引くのが太子堂の彫刻の数々。
見るだけで圧巻の彫り物の細工は繊細で美しく、先人の偉業に驚かされます。
一本の木をくり貫いて作られた木彫が随所に見られ、その技術に感服です。
バイクに戻ると、ご近所の方らしいおじいさんに話しかけられました。
「大阪から来たの?」
「はい。これから白川の方に向かいます」
「富山にも合掌造りが二か所あるから寄って行って」
「ええ、そのつもりです」
「いい天気で良かったね。気を付けて」
優しい言葉をかけられて、心が温かくなりました。
この後は、更に南へ向かい、岐阜県境にある世界遺産の合掌造りの村々を巡ります。
瑞泉寺を後にして、国道304号線を南下して富山県の岐阜県境へ向かいます。
山越えのルート。
途中の展望所からは富山平野が見えます。
一歩足を踏み入れると、美しくてどこか懐かしい日本の原風景に引き込まれる五箇山相倉合掌造り集落。
世界遺産を見ようと訪れる観光客向けに民宿や土産物店が並び、鄙びた山村の日常も俗化しているようです。
そんな中、畑仕事している村人を見つけて、ホッとしました。
ちょうど茅を葺き替えている家がありました。
集落もはずれまで来ると、静か。
駐車場に戻ると、石狩ナンバーのカブが止まっています。
なんと、北海道からフェリーで舞鶴に上陸し、ここまで走って来たそうです。
二週間かけて西日本を一周するとか。
「どこに泊まるんですか?」
「ライダースハウスやユースホステルに泊まりながらね」
と笑う70才。
おみそれしました。
撮影・掲載許可済み |
相倉集落を後に、今度は菅沼集落へ向かいます。
入口が見えました。
自然に囲まれた菅沼合掌造り集落には9戸の合掌造り家屋が現存しており、五箇山の歴史と伝統を体験できる五箇山民俗館や先人の文化や暮らしを体感することができる塩硝の館があります。
高台にある駐車場から村を見下してみました。
先程の相倉集落以上に整備されています。
集落の道も綺麗で、案内標識も充実しています。
ほとんどの家が、飲食店や土産物店を営んでいて、まるでテーマパークのような違和感を覚えました。
今日のランチは白川郷で、と思っていました。
しかし、相倉合掌造り集落から菅沼合掌造り集落へ向かう途中の国道156号線沿いに、とても気になる看板を見つけました。
「熊・豆腐料理」と書かれています。
ジビエが大好きな私。
もう、ここで決まりです。
昭和58年(1983年)創業とあります。
32年になるということです。
質素な山小屋風の食堂。
奥には大量の漫画本。
カウンター席に腰掛けます。
メニューはいずれも魅力的。
全部食べたくなりますが、そういう訳にはいきません。
しかも、一品はことごとく酒のアテにぴったり。
そう思ってメニューを眺めていると、まさにそのお酒のメニューもありました。
ズバリ、お酒のおつまみも。
この近所に民宿とかあるのでしょうか。
飲酒運転にならずにこんな山奥で酒を飲むためには、泊まるしかありません。
「泊まってでも食べたい、いや飲みたい」
と思います。
定番のメニュー。
定食、鍋、麺、丼と書かれていますが、一般的な食材に混じって、ジビエがそこここに。
一品料理も然り。
名物の地豆腐料理もラインナップ。
店主の思いを表現したメッセージが書かれていました
食物連鎖という自然界の掟には、私は賛成派。
先日行った和歌山県太地町での鯨やイルカの捕食も、こうした山奥での獣肉の食習慣も、生きていくためには当然です。
しかし、自然の恵みに対する感謝と畏敬の念は、私もこの店主のメッセージに全く同感です。
鍋か丼か、はたまた熊、鹿、はくびしん、猪、きじか。
全部食べたいけれどそうもいきません。
鍋だと酒が飲みたくなるなと思い、丼にしました。
注文したのは、人生初の熊肉が食べたくて、くま丼。
赤かぶ酢漬けも付いてくることをしっかり確認。
更に名物の五箇山豆腐の冷奴。
そして、すごく気になったくまトロも注文します。
二種類、違う場所で獲れた熊だそうです。
「草の実かブナを食べています。取れた場所が違うので、味が違うはずです」
と店主。
腰の脂身にあたる部位をマイナス64度で瞬間冷凍し、1ヶ月半寝かせてようやく保健所の許可がおりるそうです。
冬眠中のエネルギーが蓄えられている部位ですから、栄養価が高いことは想像に難くありません。
確かに脂の色が違います。
「8度から10度で脂が溶けるので、わさびを醤油に溶くと弾いてしまうから、脂にわさびをのせて食べてください」
と教わりました。
ゆっくり味わって食べたいのですが、みるみる脂が溶けていくのがわかります。
さて、メインのくま丼です。
牛蒡と玉葱、葱と一緒に玉子で綴じています。
五箇山豆腐。
店主の作った大豆を使ったもの。
気になっていた赤かぶの酢漬けも添えられていました。
熊肉は固くては噛み応えがあります。
猪肉に似ていますが、もっと濃密な味わい。
「ゆっくり噛んで、味わって食べてください」
と店主。
しっかり血抜きをしないと臭くて食べられたものではない、と聞いたことがありますが、全く臭みがないのは、上手に処理がされているからでしょう。
自ら獲物を仕留める猟師だからこそと言えます。
「歯ごたえがある」
と言ってもいいほど、しっかりと固い木綿。
「お塩で食べると美味しいですよ」
と教わった時には、既にお醤油をかけた後。
しまった。
それでも、比較的かかっていなかった豆腐に塩をかけていただいてみました。
確かにこの方が、大豆の味がよくわかります。
「最近忙しくなって、自分の仕留めたものだけではまかなえなくなってきたんです」
テレビの取材やネットの情報などで、遠方から来るお客さんが増えたそうです。
今日は平日なので地元の人が多かったですが、土日は観光客中心のようです。
「バイクですよね?どちらからですか」
「大阪からです」
「北陸は海の幸が有名ですが、こういうのもあるんです。冬眠する動物を食べるのは珍しいですよね」
お会計を支払うと、私とお金に合掌する店主。
獣を仕留め、それを食用で供することを生業とするだけに、自然と生き物への敬意の念は人一倍強いようです。
食物連鎖と、自然への感謝の心を改めて考えさせられた、素晴らしい店でした。
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昨日は新潟県まで足を伸ばしましたが、今日は岐阜県へ。
素晴らしいジビエ料理を食べた後、国道156号線を南へと走ります。
今日もいい天気です。
岐阜県に入りました。
白川村です。
国道156号線は白川郷内通行禁止。
集落を流れる庄川を挟んだ反対側に大きな駐車場が出来ていて、車はそこに止めることになっています。
駐車場へのアプローチに建つ合掌造りの家々は、村内各地の合掌家屋を当地に移転し合掌造り民家園として、施設利用されています。
白川村の歴史や文化を学べる施設と共に、飲食店や土産物店として再利用されています。
貴重な文化遺産を守るためですが、どうにもテーマパークのような奇異な印象は否めません。
総合案内所でパンフレットを貰います。
実に多様な言語が用意されています。
橋を渡って、白川郷萩町地区へ。
そしてご多聞に漏れずインバウンドの観光客があちこちで記念写真撮影。
歴史に思いを馳せるよりも、記念撮影に意味があるようです。
どの家屋も民宿や飲食店、土産物店となっていて、生活感は感じられません。
美しい日本に原風景なのに、どこかよそよそしく感じるのは私だけなのでしょうか。
かつて駐車場だった場所は、整備されて広場になっていました。
とりあえず、和田家に入ってみることにします。
荻町合掌集落で最大規模を誇る合掌造りです。
江戸期に名主や番所役人を務めるとともに、白川郷の重要な現金収入源であった焔硝の取引によって栄えました。
現在も住居として活用しつつ、1階と2階部分を公開しています。
和田家代々で使用された遺物や民具が展示されています。
子供たちと見学した施設は、二階にびっしりと民具が並んでいて、屋根裏まで上がれた記憶があるので、この家ではなかったようです。
和田家を出て、用水路沿いに歩いてみます。
観光客のいない、合掌造りの風景を切り取って撮影するのは至難の業。
かくいう私も観光客なので、言えた義理はないのですが。
もう一軒、見学して見ることにします。
長瀬家は250年つづく旧家で、初代から三代目までが医者でした。
5階建ての合掌造り家屋で、1階には500年前の作と云われている荘厳な仏壇の他、美術品・什器等を展示しています。
3、4階には昔からの生活用具を展示。
思い出しました。
子供たちと来たのは、ここでした。
約11メートルの一本柱(合掌柱)が屋根の勾配の上から下までを貫き、大きな屋根を形作っています。
ようやく、自分の記憶のある白川郷を見つけました。
明善寺郷土館。
文化財の庫裡(くり)、鐘楼門、本堂、イチイの木によって知られる由緒あるお寺です。真宗本覚寺より分派した門信徒により1748年に創建されました。
本堂、庫裏、鐘楼と合掌造りのままなのは他に類を見ないそうです。
なんともほろ苦い気持ちで20年ぶりの白川郷見学を終えて、駐車場に戻ると、相倉集落で会ったおじいさんの石狩ナンバーのカブが止まっていました。
暗い気持ちも吹き飛んで、思わず笑ってしまいました。
道中、お気をつけて。
帰りは東海北陸自動車道白川ICから一気に富山を目指します。
世界遺産認定は、失われゆく優れた人類の文化遺産の保存と継承が重要な目的のひとつですが、こういう形でしか、その目的を達することができないものなのか、と功罪を感じる訪問となりました。
それでも、その現実を目の当たりにして知ることができただけでも、はるばる来た甲斐があったと思いました。
ホテルの大浴場でゆっくり疲れを癒しました。
公式HPから |
コインランドリーでバイクウェアを洗濯したので、夜の街へ繰り出すのは20時過ぎと遅くなりました。
今日もホテルで貰った無料路面電車券で富山駅へ。
昨日素晴らしい料理を食べさせてくれた親爺を再訪しますが、満員で断念。
東京の友人から昨日教わった情報をもとに、中嶋という居酒屋を訪ねることにしました。
バーやスナックが並ぶ新富町エリア。
飲食ビルの一階に入っています。
ここは居酒屋でありながら、旨いブラックラーメンを出すそうです。
居酒屋とはいえ、軽めのアテが中心。
日本酒が充実しているようです。
初めての店は、ドアを開ける時が一番緊張します。
まして、中の様子が見えないスナック風の外観。
L字カウンターの小さな店は6、7人も入れば満席。
完全にスナックの居抜きです。
先客は男性一人、女性一人、それぞれお一人様。
すっかり打ち解けて店主と話していますが、実は二人とも地元の方ながら、この店は初めてだと後でわかります。
おすすめコースにしようかと考えて店主に伺いますが、料理が選べないとのことなので、アラカルトにします。
店主は飄々としていて、ちょっととっつきにくい話し方。
日本酒の品揃えが充実しています。
辛口がいいなと思い、岩瀬 満寿泉を頼みました。
すると、
「それはおすすめできません」
とぶっきらぼうに言い放ちます。
「どうしてですか?」
「それは純米だからです。辛口なら朝日町の風をおすすめします」
ときっぱり。
「おすすめできないものを何で置いているのかな」
と思いましたが、ここは店主に従うことにします。
すっきりとした辛口。
確かに旨い。
アテを頼みます。。
富山の名物昆布〆にしましょう。
甘エビの昆布〆。
冷蔵庫からタッパーを出して、器に盛り付けます。
予想通り、自家製。
もっちり、ねっとりした食感。
エビの甘さが上手く昆布〆によって引き出されています。
なかなかの料理人とお見受けました。
最初はテンポが合わせにくいと感じた店主でしたが、実は優しいということがわかってきました。
「どちらからいらしたんですか?」
「大阪からなんです。バイクツーリングで」
明日の予定が定まらない私が、近場でどこ行くべきか相談すると
「称名滝(しょうみょうだき)がいいですよ。ここから一時間くらいで行けますし、パワースポットですから」
と教えてくれました。
パワースポットかどうかは、私には関係ありませんが、このあたりから私と店主の距離は近づいていきます。
そこへ酔客が三人入ってきました。
やはり地元客ですが初めてのようです。
「ラーメン3つ!」
と注文します。
すると店主はやんわりと
「すいませんが、うちはラーメン屋じゃないんで、お酒やおつまみを食べて頂きたいんです」
と言います。
「あ、そうなんですか。表にブラックラーメンって書いてあったから」
私は心の中で激しく同意します。
それでも、酔客たちは素直に店主の指示にしたがいます。
「やっぱり日本酒かなぁ」
「当然です。日本酒ほど美味しいお酒はありません。焼酎なんかまずくて飲めたもんじゃないです」
焼酎好きの私は、頼まなくて良かったと思いましたが、だったらどうして焼酎を置いているのか、また疑問が湧いてきました。
しかし、それは口に出さずに追加の注文。
今度は干物。
この店はマスターに任せた方が良さそうだと思い、オススメを聞くと
「やがらが美味しいですね」
と言います。
もちろん干物も自家製。
やがらの干物。
いかにも富山らしくなってきました。
やがらは数が少ない高級魚。
白身魚ですが、濃厚な味がします。
干物にすることで、更に味が濃縮された感じ。
隣の酔客たちがラーメンを頼みました。
私も、それに相乗りです。
ラーメンを作りながら、店主は問わず語りに話します。
この店は12月で丸5年。
ラーメンは、スープの関係で1日20食限定だそうです。
元々は富山の有名店でラーメンの修業をしたそうですが、居酒屋で独立した時に、昔のお客さんからの強い要望で、飲んだ後に合うラーメン考えたそうです。
「修業した店の味とは全く違う味ですよ」
と言います。
一度に二人しか作れないとのことで、私は二順目。
フライパンでチャーシューを焼き、小さな鍋で麺を茹でつつ、丼にかえしを入れます。
富山ブラックラーメン。
ビジュアルはいかにも正統派。
スープを一口。
しっかりと醤油の風味を感じますが、一般的な富山ブラックよりは醤油の主張が控えめな気がします。
ブラックペッパーを振ってから、麺をいただくことにします。
中太の縮れ麺は、かん水が強め。
しっかりと醤油スープを受け止めています。
チャーシューは柔らかく、バラ肉の割には脂っぽさを感じません。
「脂を落とすのと、食感考えて焼いているんです」
と店主。
飲んだ後、ということもあって、醤油味のスープは素直に身体が受け入れます。
先ほどの店主の話の通り、飲んだ後に合うように作られているからでしょう。
あっさりと完食完飲。
酔客の一人が、食器棚に飾ってあるラグビーのチケットを見つけて
「ロンドンに行かれたんですか?」
と話しかけました。
途端に店主の目が輝きだしました。
ラグビーが大好きらしく、、あの伝説の南アフリカ戦をVIPシートで見たそうです。
ラグビー話になると、途端に饒舌になり、全く止まりません。
お隣の酔客は、押してはいけないスイッチを押してしまったようです。
私は、さりげなくお会計を済ませて、熱弁をふるう店主とお別れしました。
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