外を見ると、山には靄がかかっています。
土讃線の列車の音も耳に心地よい山の朝。
温泉で朝風呂を浴びて戻ってきて朝食です。
これ位がちょうどいい。
バイクウェアに着かえてチェックアウト。
8時前には出発です。
井川池田ICから徳島自動車道に入ります。
吉野川橋を渡って、更に川沿いに東へ。
美馬ICを下りて南へ向かいます。
剣山は雲の彼方。
国道438号線美馬橋で吉野川を渡ります。
吉野川の支流、貞光川には沈下橋が続いています。
増水した時に欄干が流されないように、初めから欄干を作らないという建築方式。
欄干を作らないことで、橋も流されにくくなるのです。
一昨年四国一周ツーリングの時に四万十川で、いくつかの有名な沈下橋を走ったことを思い出しました。
あの山のずっと向こうが剣山。
渓谷沿いにどんどん高度を上げていきます。
こんな山奥にまで集落が、と驚くほど。
標高1,000mまで上がってきました。
4輪では離合が困難な「酷道」を更に上ります。
美馬市から三好市へ。
この峠が四国の国道の最高標高地点。
東方を望みます。
剣山の後、訪ねる予定の祖谷(いや)方面。
平家の落人伝説の地です。
剣山のリフトが見えました。
バイクを止めてリフトに乗ります。
昨日の石鎚山は近くから拝むだけでしたが、今日の剣山は山頂を目指して登山します。
標高差は330mをおよそ15分で一気に登ります。
リフトとしてはかなり長いもの。
下りたところは標高1750m。
剣山は1,955mですから、あと200m登ることになります。
昨日その姿を間近から拝んだ石槌山は1,982mですから、その標高差はわずか30m足らず。
ここからが登山道。
本格的な登山姿の方が多い中、バイクウェアの私はいささか浮き気味です。
登りはやや緩やかな大劔道コースを取ることにしました。
周囲は雲に覆われて、あまり視界が利きません。
3分の1ほど登った所に大劔神社があります。
縁結びの神様。
少し登って振り返ると、ご神体の御塔石(おとうせき)が見えました。
更に高度が上がると植生が変わり、熊笹に覆われた低木地帯となります。
道が険しくなってきました。
剣山本宮の鳥居が見えました。
山頂はもうすぐです。
1時間かかるとガイドに書いてありましたが、30分で登れました。
汗だくです。
山頂すぐ近くの剣山本宮宝蔵石神社。
その脇の階段を登ると、急に視界が開けます。
山頂付近は草原のようになっています。
雲に囲まれて視界が十分ではありませんが、360度の素晴らしい眺望です。
三角点。
1,955m。
下りは尾根道コース。
急な道ですが、気をつければ難しくはありません。
20分弱でリフト乗り場まで下りてきました。
再びリフトで下山。
目の前には先ほど登ってきた国道438号線が見えます。
この後、祖谷(いや)の渓谷沿いに下っていきます。
剣山から下山してきました。
ここから国道439号線、通称「ヨサク」と呼ばれる四国の400番台「酷道」の代表とも言われる道を祖谷川(いやがわ)沿いに下ります。
奥祖谷二重かずら橋。
キャンプ場と併設になっています。
入場料550円を払って中に入ります。
渓谷に向かって下りて行きます。
下の方に橋が見えて来ました。
約800年前平家一族が剣山、平家の馬場での訓練に通うため架設したといわれています。
奥祖谷かずら橋キャンプ場への通路ともなっています。
かずら橋が2本並んで架かっているため、通称「男橋女橋(おばしめばし)」とも「夫婦橋(みょうとばし)」とも呼ばれています。
女橋の横にはロープをたぐり寄せて川を渡る人力ロープウェイ・野猿(やえん)があります。
まずは男橋から渡ってみます。
こんな構造のつり橋です。
なかなかの高さ。
この隙間、そしてかなり揺れるので、スリリングで暑さも忘れます。
男橋を渡り、少し上流にある女橋へ。
その前に河原に下りてみました。
首に巻いていたタオルを冷たい川の水ですすぎます。
水も飲んでみましたが、冷たくて美味しい。
滝で遊ぶ若者たち。
先程渡った男橋は、下から見るとそれなりの高さです。
女橋も渡ってみます。
こちらは高さも低いので、男橋ほどのスリルはありません。
野猿(やえん)が見えました。
近畿地方では奈良県南部の山岳地帯にもみられます。
ロープウェーと原理は同じです。
水平に張られたケーブルに吊るされた籠を、両岸の滑車を通したロープで引っ張る人力籠。
遠くから見ると猿が木を乗り移るように見えることから野猿と呼ばれています。
若者たちに混じって、いい年をした私もチャレンジしました。
1時間ほど遊んでしまいました。
更にバイクを西へ走らせます。
すると、急にたくさんのかかしが現れました。
いわゆる田んぼの鳥避けのかかしではなく、洋服を着て、まるで人間のようです。
このかかしは村の人口約40人の倍以上にあたる100体ほど。
私も動いている人をこの集落で見たのは一人だけでした。
標高800mにある「天空の里」とも呼ばれるこの小さな山村で、このかかしを作り続けているのは一人の女性。
日本のメディアはもちろん、海外でも取り上げられ、
「かわいい」
「不気味」
などいろんな評価がされています。
村の入り口には看板まで立てられ、村おこしの一環となっています。
平家落人伝説が多い祖谷の集落の中でも、実にシュールで特徴的な村でした。
更に祖谷の渓谷を西へ。
比較的大きな集落に出て来ました。
国選定重要伝統的建造物群保存地区となっている落合集落。
東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点より山の斜面にそって広がる集落です。
集落の起源は明らかになっていませんが、平家の落人伝説や開拓伝承などが祖谷地方には残っています。
集落内の高低差は約390mにも及び急傾斜地に集落を形成しています。
江戸中期から昭和初期に建てられた民家や、一つひとつ積み上げた石垣と畑などの光景は、なつかしい山村の原風景を醸し出しています。
平成17年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
三好市観光サイトから |
遅いお昼ご飯を、この集落のそば道場で食べることにしました。
蕎麦打ち体験ができることが、この店名の由来になっているとか。
実に田舎らしい造りの店。
ご夫婦で切り盛りしています。
シンプルなメニューの中から山かけそばの大盛を選びました。。
想像したほど大盛ではなかった山かけそば。
蕎麦は平たく、長さは不揃いです。
ややボソボソっとした食感も、田舎そばらしいもの。
食べている最中に暖簾が仕舞われました。
15時の閉店時間を待たずに終了のようです。
あわやランチを食べ損ねるところでした。
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途中に防災ダムが数多くあるので、川の流れは緩やかです。
祖谷かずら橋に着きました。
今晩泊まる予定の祖谷観光旅館は目と鼻の先。
旅館といっても民宿のようです。
祖谷かずら橋は、昼に立ち寄った奥祖谷二重かずら橋と違って、大歩危小歩危からのルートなら、ここまでの道路はしっかりしているので、観光バスも入れます。
団体客が大勢来ていました。
シラクチカズラ(重さ約5トン)で作られたもので、長さ45m・幅2m・水面上14m。
昔は渓谷地帯の唯一の交通施設でした。
3年毎に架替えが行われる国指定重要有形民俗文化財です。
ここでも550円払って橋を渡ります。
高さは奥祖谷かずら橋の比ではありませんが、人が多過ぎて秘境感はありません。
その代わり大勢が渡るので、その揺れが怖く感じます。
橋は一方通行で一回きりしか渡れません。
渡り切った所にあるびわの滝。
奥祖谷二重かずら橋の方が面白かったので、行って良かったと思いました。
祖谷川から峠を超えて吉野川へ。
大歩危小歩危峡に沿って国道32号線を走ります。
元鉄ちゃんの私は、まずは土讃線の大歩危駅にご挨拶に立ち寄りました。
今では鉄道でこの地を訪れる人も少ないでしょう。
なんとも旅情をそそるローカル線のホーム。
昨夜泊まった小西旅館はこのずっと先にあたります。
大歩危峡といえば川下りやラフティングが有名です。
結晶片岩が水蝕されてできた溪谷は、大理石の彫刻がそそりたっているかのように見えます。
春は桜、秋は一面の紅葉が清流に色をそえ、スリル満点の舟下りが楽しめるそうです。
「大歩危」(おおぼけ)の地名の由来は、一般には漢字説(「大股で歩くと危険」)が有名ですが、昔から現在の漢字で表記していたわけではなく、それは俗説です。
「ほき、ほけ」は断崖を意味する古語で、渓流に臨んだ断崖を意味するとされ、それが語源となっています。
そのまま川沿いを下って小歩危駅へ。
国道沿いの狭い駐車スペースにバイクを止めて、階段を上がります。
駅舎は崖の上。
土讃線の車窓からの眺めは素晴らしいことでしょう。
乗ってみたくなりました。
もう少し下ると吊り橋がありました。
赤川橋というそうです。
観光目的ではないので、万一の事故にも責任は負いませんという警告。
それでも眺めがよさそうなので、自己責任で渡ってみることにしました。
小歩危峡の眺め。
澄んだ碧い水の色が特徴的。
再び峠を超えて祖谷に戻ります。
今日泊まる宿から頂いた入浴無料券を使って命の洗濯。
宿からバイクで7,8分のところにある祖谷渓温泉ホテル秘境の湯の日帰り湯です。
明るて綺麗で広い館内は、「秘湯の湯」というにはあまりにも立派です。
泉質は炭酸水素塩泉。
今日も一日暑くて汗をかきましたので、早くさっぱりしたいところ。
阿波の青石を敷き詰めた大浴場は、一面ガラス張りで、原生林の生い茂る祖谷渓谷を見渡せます。
ジェット浴、気泡湯、寝湯などがあって、ゆったりできます。
公式HPから |
秘境・祖谷の大自然を堪能できます。
公式HPから |
宿に戻ってきました。
祖谷観光旅館といいますが、施設は民宿のような素朴な宿。
なんとも古い部屋ですが、窓からは祖谷渓谷の緑が見えるいい眺め。
食事は一階の食堂で。
意外と混んでいました。
お料理はテーブルに用意されていました。
あめごの煮物も出てきました。
これで勢揃い。
缶ビールは持ち込んで、冷蔵庫に入れさせてもらっていたもの。
「うちの料理はボリュームはあってもお腹には優しいですよ」
と女将さん。
確かに山のものばかりで、肉や海のものはありません。
お酒は、やはり持込の缶チューハイに切り替え。
「そろそろご飯をお願いします」
と厨房にいる女将さんに声をかけます。
「お蕎麦もお出ししますね」
と女将さん。
「そばは自家製ですよ。私が打ったんです。ここらあたりでは、みんな自分の家で打つんです」
ちょっと甘いな、と思う出汁もなぜか許せる女将のキャラクター。
締めのご飯はとろろで。
「すいません、生卵あったら貰ってもいいですか」
なんとも厚かましい客に、嫌な顔一つせず冷蔵庫から一つ出してくれる女将。
生卵を割ります。
やりたかったのはこういうこと。
何とも身勝手な客の注文に応えてくれる女将さん。
田舎宿の良さを実感します。
「すいません、洗濯したいんですけど洗濯機借りれますか?」
「うちはお貸しする洗濯機は無いんですけど、私が洗ってお部屋までお持ちしますよ」
申し訳ないとは思いながらも、バイクウェアは洗いたかったので、女将のお言葉に甘えることにしました。
足がお悪いのに、22時頃に洗い終わった洗濯物を持って私の部屋までお持ち下さいました。
部屋のハンガーにバイクウェアを干しながら、本当に良い旅館とは何なのかと改めて考えさせられました。
【本日の走行距離】143.4km
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